破綻が避けられない状況にある株式会社の代表取締役が第三者へ依頼した融通手形の割引きにより発生した損害につき、平取締役の監視義務違反が肯定されたケース

事実関係

A社は、肥料および飼料の製造・販売を業とする株式会社です。A社は、設立後しばらくは順調に業績を上げてきました。

しかし、取引先の倒産により発生した不良債権を自己資金で補ったことにより、当時A社が融資を受けていた信用金庫から信用度に疑問を持たれて融資枠が縮減され、資金繰りが次第に悪化していきました。

その後も、A社は取引先の倒産によりさらに不良債権を抱え、資金繰りのみならず経営も悪化していきました。

A社の経営が悪化したことで、同社の代表取締役であるY1はXにA社の経営の今後について持ち掛けたところ、Xから資金援助の約束を取り付け、Y1が取引先から交付を受けた融通手形(本件各手形)をXに割り引いてもらうことによって資金を得ることにしました。

もっとも、Xの割引率が当時の市中銀行の金利を大きく上回っていたため、結果的にA社の経営状況の改善には結びつきませんでした。

そのため、A社は利益率の高い機会を販売して経営の改善を図るべく新たな機械の開発などを行いましたが、取引先・機械製造元の倒産や売上高が伸びなかったこともあり、さらに損失は膨らみました。

結果的に、A社は2度の手形の不渡りを出し、Xにより破産の申立てがなされ、同社に対する破産宣告が行われました。

Xは、A社の倒産により手形金の支払いが受けられず損害を被ったとして、Y1ならびにA社の取締役であるY2・Y3に対して商法旧266条ノ3に基づき損害賠償請求の訴えを提起しました。

判旨

裁判所は、代表取締役であるY1について、A社の厳しい経営状況にもかかわらずそれが好転すると妄断して本件各手形の割引きを受けたことは、代表取締役としての任務を懈怠したとして責任を肯定しました。

また、取締役であるY2・Y3について、Y1に対する監視義務違反を認め、責任を肯定しました。

Y2・Y3の監視義務違反が肯定されたポイント

Y2・およびY3は、A社の取締役の地位にあり、営業を担当していました。Y2らは、A社の経営が悪化していること、およびY1がA社の代表取締役として手形割引を受けていることを知っていました。

また、Y2らは、A社の経営状況を確認し、取締役会の開催を求めて、Y1が融通手形の割引きを受けることを容易に阻止することが可能でした。それにもかかわらず、Y2らは、何らの措置もとらずにY1の手形割引行為を放任していました。

以上のことから、裁判所は、Y2らの監視義務違反を肯定しました。

コメント

本件は、倒産が不可避といえる状況にある会社の代表取締役が資金繰りのために第三者に依頼した手形割引について、当該手形が不渡りとなったために生じた損害につき他の取締役の監視義務違反が問われた事例です。

本判決は、代表取締役のY1はもちろんのこと、取締役のY2・」Y3についても上記の通り監視義務違反を認めて責任を肯定しています。

これは、取締役としての実質を備えた者に対する監視義務違反が正面から認められた事案いえるでしょう。

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ネクスパート法律事務所