代表取締役らによる詐欺的なマンション経営契約勧誘を看過した非常勤取締役の監視義務違反が認められたケース

事実関係

A株式会社は、多数の出資者に対し高額な配当利回りや元本保証が得られるとする詐欺的なマンション経営契約を勧誘していました。

しかし、まもなく同社は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締等に関する法律違反等の容疑で警察の捜索を受け、昭和45年7月、破産宣告を受けて倒産しました。

A社に出資して損害を被ったXは、

①主位的請求として代表取締役Y1、取締役Y2、従業員であるY3~Y9、および取締役Y10のA社関係者全員に対し、民法709条および715条に基づく損害賠償請求をしました。

また、②予備的請求として、取締役であるY1、Y2、Y10に対しては、商法旧266条ノ3第1項に基づく損害賠償請求の訴えを提起しました。

判旨

裁判所は、A社の代表取締役Y1、取締役Y2 、従業員Y3については、詐欺行為に直接荷担していたとして不法行為による責任を認めました。

次に、従業員Y4~Y9については、いずれもY1らの詐欺を知りまたは知りうべき状態になかったとし責任を認めませんでした。

そして、取締役Y10については、「株式会社の取締役は、会社に対し、代表取締役が行う業務執行につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じての業務執行が適切に行われるようにする職責があるといわなければならない。」とした上で、代表取締役Y1の違法な業務執行に対する監視義務違反を肯定し、責任を認めました。

Y10の監視義務違反が認められたポイント

Y10は、Y1の依頼で銀行に融資の相談をしたところ、銀行からA社は銀行類似の行為をしているとの理由で融資を断られたことがあり、A社の業務が違法なものであることを知っていました。

それにもかかわらず、Y10はA社の幹部会に出席したことはなく、また、取締役会を自ら招集し、あるいは招集を求めたこともなく、A社の業務を是正するための措置を取っていませんでした。

以上のことから、裁判所は、Y10の監視義務違反を肯定しました。

コメント

本事案は、詐欺的なマンション経営契約の勧誘という違法業務を行っていた会社の関係者らが出資者Xから損害賠償の請求を受けたというものです。

結論として、直接詐欺に荷担していた代表取締役Y1および取締役Y2には不法行為に基づく害賠償責任が認められました。

また、Y1の業務執行の監視を怠ったY10には、商法旧266条ノ3第1項に基づき取締役として第三者であるXに対する損害賠償責任が認められました。

Y10は自らは非常勤取締役にすぎないと主張していますが、裁判所は、非常勤であっても取締役である以上は取締役会を自ら招集しあるいは招集を求める権限を有することに変わりはないとして、これを一蹴しています。

この記事を書いた人

ネクスパート法律事務所