専務取締役に会社の経営を任せきりにした代表取締役の監視義務違反が認められたケース

事実関係

Bは、A株式会社の経営を企画するにあたり、かねてから顔見知りであったYが著名な経済人の子息で、知名度が高く、信用もあることからこれを利用しようと考えました。

そこで、Bは、昭和44年8月頃、Yに対し、鶏卵や青果物等の販売を目的とする会社を経営しようと思うので社長となって協力してもらいたいと申し込みました。

Yの承諾を得た上で、登記簿上のみ存在するいわゆる「休眠会社」を利用し、同年10月28日、本店所在地および目的の変更登記をし、Y、B、Cが取締役に、Yが代表取締役にそれぞれ就任した旨の登記を経由してA社の体裁をととのえ、同じ頃営業を開始しました。

Bは、詐欺の前科を持ちながら、その事実を秘してYに近づいていましたが、Yは軽率にもBを信用してA社の専務取締役としました。

そして、YはBにA社の経営を一任し、Y自身は大口の販売先や取引銀行をA社に紹介する程度で、代表取締役印もBに託し、A社の経営にほとんど関与していませんでした。

また、Cも名前だけの取締役で、A社の経営には関与していませんでした。

Bの経営ははなはだ放漫かつ杜撰なもので、Yより紹介された大口の販売先に契約通りの商品を届けず、あるいは商品を横流しする等して次第に取引先の信用を失い、取引を停止されるか取引額を減少されました。

資金状態も悪化し、昭和45年3月末頃には手形の決済にも苦慮するようになり、従業員と共謀して仕入れが商品をA社に入荷せず正常な取引によらないでバッタ売りを行った結果、A社は同年5月13日倒産するに至りました。

Xは、昭和45年4月10日、A社との間で青果物等の継続的取引契約を締結し青果物をA社に売り渡しましたが、その代金の一部が支払われないままA社が倒産したために、残代金と同額の損害を被ったと主張して、Yに対し損害賠償請求の訴えを提起しました。

判旨

裁判所は、Yの代表取締役としての監視義務違反を肯定し、Xの請求を認容しました。ただし、Xの注意義務違反を認め、12%の割合で過失相殺をしました。

Yの監視義務違反が肯定されたポイント

Yは、ほとんど会社に出勤したことがなく、A社の倒産に至るまで取締役会を開催したこともありませんでした。また、A社の帳簿類を閲覧して経理状況を把握することもせず、経営の実態も知りませんでした。

要するに、Yは代表取締役の地位にありながら、Bに経営を一任したまま、その業務執行に対する監督を怠っていました。

さらに、Yは、取引銀行から手形の決済が順調に行われていないとの注意を受け、またA社の運転手からBらが不正な安売りを行っているとの報告を受けていたにもかかわらず、何らの適切な措置を取りませんでした。

以上のことから、裁判所は、Yの監視義務違反を肯定しました。

コメント

本件は、専務取締役に会社の経営を任せきりにしていた代表取締役の監視義務違反が認められた事案です。

最大判昭和44年11月26日(【5】)を前提にすれば、顔見知りにすぎないBを安易に信用して、会社経営を一任し、その業務執行の適正さに意を用いていなかったYについて監視義務違反が認められることは当然だといえるでしょう。

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ネクスパート法律事務所