取締役の監視義務違反と第三者の被った損害との間に因果関係がないとされたケース

事実関係

A株式会社は、昭和45年4月20に土木建築業を目的として設立され、Bはその設立以来の代
表取締役でした。Yは、A社の設立にあたり、Bの懇請を受けて、A社の代表取締役に就任することを承諾し、取締役および代表取締役就任の登記がなされました。

しかし、A社ではBが経営の実権を掌握し、顧客や下請人との契約の締結、金銭的取引といった対外的取引はBが専行していました。Yは、女子事務員の記帳方法を指導したり建築現場の監督に従事したりしていましたが、昭和45年11月頃、Bの経営ぶりに不満を抱くようになり、Bに対し代表取締役辞任の意思を表示しました。

その後、Yは、1、2ヶ月は請負工事の現場監督をする等若干のA社業務に従事してはいましたが、外観上代表取締役としての職務といえるような業務を行うことはありませんでした。A社は、その設立より昭和46年3月31日までの第一事業年度においては利益を計上していましたが、次第に資金繰りに窮するようになり、同年6月2日不渡手形を出して倒産しました。

このため、A社の取引先であるXは同社に対する債権を回収できなくなり、その債権額相当の被害を被ったと主張して、Yに対し損害賠償請求の訴えを提起しました。

判旨

裁判所は、Yの取締役としての監視義務違反は肯定しましたが、Bには任務懈怠が認められず、Yの監視義務違反とXの損害との間には相当因果関係がないとして、Xの請求を棄却しました。

Yの監視義務違反が肯定されたポイント

Yは、代表取締役であったにもかかわらず、A社の対外的業務をBに任せきりにしていました。また、代表取締役を辞任し取締役となってからも、取締役としてBの業務執行を監視し、これが適正に行われるように気にかけるといったことをしていませんでした。

以上のことから、裁判所は、Yの監視義務違反を肯定しました。

コメント

本事案において裁判所は、Yの監視義務違反を肯定したものの、それとXが被った損害との間で相当因果関係がないとして、Xの請求を退けています。

つまり、裁判所は、A社倒産の原因としては、赤字工事による損失がどの程度影響しているか不明である以上、ほかにも従業員の不正や債権回収不能等の事情が競合しており、Bの任務懈怠を認定することはできず、仮にYがBに対する監視義務を尽していたとしてもA社の倒産は免れなかったと判断したということになります。

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ネクスパート法律事務所