実質的経営者である取締役による会社に損害を与える行為を防止すべき監視義務を怠ったとして、取締役・監査役に商法旧266条の責任が認められたケース

事実関係

A社は、昭和42年4月14日に破産宣告を受けました。Y1は、昭和40年2月4日から昭和41年12月4日までは同社の取締役、同月5から昭和42年4月14日まで監査役の地位にあり、その間同社の営業経理関係一切を委任され、その業務に従事していました。
ところが、Y1は在任中、

1 Y1自らのために、A社振出Y1裏書の手形を用いてBから手形貸付を受け、またBに手形割引を依頼しており、その金利あるいは手形割引料としてA社資金からBに40回にわたり合計約173万円を支払った

2 Y1の妻であるCに対し、A社を代表してA社所有の簿価約71万円であった(直後にCが新車購入の際に下取りに出したときには55万円と評価された)自動車を、特段の事情がないのに、40万円という廉価で販売した上、Cが払うべき自動車割賦代金のうち約32万円をA社から支払った

3 A社を代理して、自らの妻であるCが理事長を務める学校法人や、Cが経営する幼稚園の園舎などを、特段の事情がないのに工事報酬、利益を全く含まない価格で実費で受注して施工し、報酬相当額(100万円)をA社に得させなかった

など、A社に損害を与える行為を行っていました。Y2・Y3はいずれも、昭和40年2月4日から昭和42年4月14日までA社の取締役であり、Y2は昭和40年2月4日から昭和41年12月5日まで、Y3は昭和40年10月4日から昭和42年4月14日までそれぞれ、A社の代表取締役でした。Y4は、昭和40年2月4日から昭和41年12月5日までA社の監査役の地位にありました。A社の破産管財人Xは、Y1の他、Y2~Y4に対し、監視義務違反を理由に損害賠償を請求しました。

判旨

裁判所は、(Y1の責任を認めた上で)「Y2、Y3は、(Y1の)右不法行為当時いずれも破産会社の取締役の地位に、Y4は当時破産会社の監査役の地位にありながら、その任務懈怠により破産会社に対して前記損害を被らせたものというべきであるから、右Y2~Y4はY1と共同して破産会社に対して同額の損害を賠償する義務がある」として、Xの請求を認めました。

Y2~Y4の任務懈怠責任が肯定されたポイント

Y2~Y4は、代表取締役Y1の不法行為時に取締役・監査役の地位にありました。裁判所は、Y2~Y4の地位から直ちに任務懈怠を認定しています。

コメント

本判決は、Y1の背信行為・不法行為を認定した上で、Y2~Y4の地位から直ちに任務懈怠責任を認定しており、監視義務についての言及は特にありませんが、取締役・監査役の在任中における他の取締役に対する監視義務を当然の前提としているでしょう。判決文中に、A社はY1の一人会社的な性格が強いとの指摘がなされていますが、さらに進んでA社が実質的にY1の一人会社であったとすれば、Y2らへの請求は信義則違反で認められない可能性もあったと思われます(参考:一人会社の名目的取締役に対し、商法旧266条1項5号に基づいてなされた損害賠償請求が、信義則に反し許されないとされたケース)。

この記事を書いた人

ネクスパート法律事務所