代表取締役の業務に対する平取締役の監視義務違反が認められたケース

事実関係

A社は、BとY1、Y2らが発起人となって、昭和41年7月6日に電気製品販売・修理業を営むため設立された会社であり、設立後は、Bが代表取締役、Y1、Y2 が取締役に就任しました。

ところがA社では、当初から創立総会も株主総会も、正式な取締役会も開かれたことがなく、会社業務は95%の出資をなしたBが独断専行していました。

また、A社では会計帳簿や決算書類もほとんど作成されることなく、監査役の監査も受けていませんでした。

昭和42年夏頃、Bが他の取締役に相談することなく自動車修理部門に事業を拡大することを計画し、その資金を得るため合計900万円に及ぶ融通手形をCに振り出しました。

ところがBはCに騙され、一銭の資金も得られず手形支払義務だけが残ることになり、結果A社は倒産しました。

上記融通手形の所持人であるXらは、Y1・Y2の職務懈怠により上記手形金を回収できなくなったとして、商法旧266条ノ3の責任を追及しました。

判旨

最高裁は、「株式会社の取締役は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監査するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて業務執行が適正に行われるようにする職務を有するものと解すべきである。」とした上で、Y1・Y2に、取締役の職務を行うにつき重大な過失があるとして、商法旧266条ノ3の責任を認めました。

取締役Y1・Y2の監視義務違反が肯定されたポイント

A社では、設立当初から、創立総会も株主総会も正式な取締役会も開かれたことがありませんでした。また、A社では会計帳簿も決算書類も作成されておらず、監査役の監査も受けていませんでした。

こうした状況の中、平取締役であるYらは代表取締役Bに会社業務の一切を任せきりにし、その業務執行についてなんら気にかけていませんでした。

もし、Yらが取締役会の開催を要求し積極的に会社業務の遂行に意を用いていたならば、Bの手形濫発行為を阻止できていた可能性がありました。

以上のことから、最高裁は、Yらの監視義務違反を肯定しました。

コメント

取締役の監視義務が取締役会上程事項に限定されるのか否かについては、本判決まで最高裁の判断が示されておらず、下級審裁判例でも判断が分かれるなど争いがありました。

本判決は、この争いに決着をつけ、取締役の監視義務は取締役会上程事項に限定されないことを最高裁が明らかにした点で大きな意義をもつといえます。

この記事を書いた人

ネクスパート法律事務所