他の代表取締役が行った手形の支払いについて、すでに辞任した代表取締役の監視義務違反が認められなかったケース

事実関係

A社では、BとYが代表取締役を務めていましたが、Yは、昭和27年6月30日にA社の取締役を辞任しました。その後、同年7月15日に後任取締役としてCが選任され、同年8月29日にはYの取締役退任登記がなされました。

昭和27年8月23日、A社は、本件手形の支払いを行いました。その支払いは、Bが中心となって実行しました。

A社が行った本件手形の支払いにより、損害を受けたと主張するXは、Bに対する監視を怠ったとして、Yに対し、商法旧266条ノ3に基づく損害賠償を求めました。

控訴審はXの主張を退けたため、Xが上告しました。

判旨

最高裁は、Yは、本件手形の支払時にはすでに取締役を辞任していたことから、取締役としての任務懈怠による責任を負う筋合いはないとして、Xの請求を退けました。

Yの監視義務違反が否定されたポイント

Yは、昭和27年6月30日にA社の取締役を辞任し、同年7月15日には後任取締役としてCが選任され、同年8月29日には退任の登記がなされていました。

その後、YはA社の運営には関与しておらず、本件手形の支払いについてもA社の取締役としてなんらの職務も行っていませんでした。

以上のことから、最高裁は「Yは辞任し、後任取締役の選任がなされた後は、A社の取締役としての権利義務を有せず、また、……取締役としての行為をなんら行わなかつたのであるから、Yには、取締役としての任務、ことに前示監視義務の懈怠はなく、したがつて商法266条ノ3による損害賠償責任を負うべき筋合いはない。」として、Yの責任を否定しました。

コメント

本件では、すでに取締役を辞任して後任取締役も選任されている状況において、Yは取締役として対第三者責任を負うかが争われました。

この点につき、控訴審と最高裁はともに、Yはそもそも取締役としての権利義務を有しておらず、したがって、対第三者責任も負わないと判断しています。妥当な判断といえるでしょう。

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ネクスパート法律事務所